ケスケラの徒然日記

このブログでは日々の気づきをランダムに記録します。

knock the door?

文法というものは面倒臭いものだが、微妙なニュアンスを知るうえで役に立つ。

とはいえ、単に嫌々ながら中途半端に覚えるだけでは役に立たない。解釈のために徹底的に考えてみる必要がある。例えば桐原書店の『Forest』を読んでいると、こんな例文があった。

I heard someone knocking on the door. (214頁)

この例文には違和感を感じた。文構造のSVOが便利なのは、前置詞の要不要が判定できるからである。Oの位置にあるthe doorには前置詞は不要のはずである。

また、関正生が上手に説明しているように、「何を?」とツッコミが可能な動詞が他動詞である。するとノックするのは、何を?とツッコミできるから、一見、他動詞であり、SVOであるから、knock the doorが正しいように見える。また、そういう英文も文法的に正しいようだ。だが、knock the doorとknock on the doorとは意味が完全に異なるのである。

辞書で調べてみると確かに、knockはvtで他動詞であり、叩くという意味がある。だからドアを叩くのだから、knock the doorが正しく、例文は間違いではないかと勘違いしてしまう。だが、このknock the doorはドアを叩くというよりは、ドアを張り倒すという意味に近くなるようだ。

そこで辞書をよく読むと、knockには自動詞の意味もあり、その場合はコツンと叩くという意味となる。すると、knock on the doorは、SVであって、on the doorは単に場所を強調しているに過ぎないことが分かる。だから前置詞が必要となるのだ。

こうした微妙な違いは、SVとSVOの文構造の違いが分からないと読み取れない。

「ドアを叩く」という日本語から逆算して解釈するとSVOと間違えてしまう。あくまでknock on the doorという英文から出発して、前置詞があるからSVOではありえない。ゆえにSVなのだから、辞書で調べるときも自動詞としての意味がみつかるまで注意深く読むべきである。英語は意味よりも形が重要であると言われるのはそういうことであろう。

もちろん日本語の場合でも「ドアを破って中に入るためにドアを叩いた」と「中にいる人に知らせるためにドアを叩いた」というように、二つの異なる状況について同じ「ドアを叩く」を使い分けることができる。あるいはそこまで説明しなくても状況の文脈から、「ドアを叩く」の意味の違いが分かる。だからこそ翻訳が可能なのだが、英語の場合は、前置詞onの有無だけでその異なる状況を言い表すことができる。細かな状況説明なしで違いを言い表すことができるのは、おそらく主語が明確だから動詞のもつ意味合いも明確なのであろう。やはり言語の違いは精妙なものである。